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真珠業界 温故知新 国内編(その2)

I:真珠業界の昔と今のトレンドの違い、現在の業界について思うことをお聞かせください。
鈴木:自分が業界に入社した頃は、実際に商品を目で見た上で商売は成立していた。この流れは2000年ころまでは続いていたように思う。ところが、それ以降「直接見なくても成り立つ商売」が登場するようになった。たとえば、今では当たり前になったネット通販やテレビショッピング、宝飾店独自のインターネットサイトなどが代表例。中間業者を介さず「いいものを安く、直接エンドユーザーに」という風潮になっている。また、ここ数年のコロナの影響で、対面型商売は回避される傾向にあり、卸売と小売業者間の取引にもオンラインが導入されるようになったのは、昔では考えられない。時代が大きく動く潮目を見ているような気がしている。ちょっと長くなるけど、続けていいかな?

I:もちろんです。どうぞ。
鈴木:真珠の場合、昔とあまり変わっていない印象があるのはネックレスが売上のベースになっていること。特に日本では真珠のネックレスを冠婚葬祭につけるイメージが今も強いし、販売側にとっても稼ぎ頭、という認識は根強いように思う。一般のユーザーが購入するのは一連のネックレスが多く、そこにオリジナリティを持たせた新製品の開発というのはなかなか難しく、付加価値をつけにくい傾向も感じている。

そしてモノがなければ商売は当然できないわけで、生産現場の重要性は今も昔も変わらない。アコヤ、ゴールデンパール問わず、どんな真珠でもこれが一番大事で、「良いものを作る努力が最初であり、最後である」とずっと思い続けている。昨今は地球温暖化に加え、国内ではアコヤ貝の壊死、生産者の後継者不足という深刻な問題も起きている。こうしたことが続くと真珠の品質低下による価格下落、利益減少という悪いサイクルに陥ってゆく。今一度、現場に立ち返り、高品質な真珠を提供できる環境づくりを業界全体で模索していかなければならないと思う。

I:振り返ってみて、仕事、趣味に関わらず、「これをやっておけばよかった」、逆に「やってよかった」と感じておられることを教えてください。新社会人にも参考になりそうな気がします。
鈴木:冒頭でも言ったけれども、社会人としての知識や接待の幅が不足していると若い頃に身に染みて感じていた。なかでも特にやっておけばよかった、と痛切に思うのは英語!英語アレルギーがあったわけでもなく、親戚に外国人がいたし、仕事の現場でも英語によるコミュニケーション機会は何度もあった。社内でレッスンも受講できる環境だったのに・・。自分の役職が上がって、通訳してもらう機会が早くからあったせいもあるのかな、言い訳めいているけれど。若い方々には「英語は必須」と伝えたい。

反対にやってよかった、と思うのはゴルフ。以前はスキーをしていたけれど、会社の先輩から誘われて25歳からゴルフを始めた。ちょうどこの歳で結婚したし、両方の趣味を続けるには正直お金が足りない(笑)なので、ゴルフを選んだ。今よりもずっとビジネスシーンでゴルフをすることが多い時代で、プレーを共にすることで相手の性格の一端が見え、親しくなる機会が何度もあった。お互いに情報収集でき、営業トークのネタとしても役立ってきたと思っているよ。そして、同じ年代の人だけでなく、幅広い年代層と一緒にプレーできるゴルフは今も自分の楽しみの1つ。今後も公私ともにできるだけ長く続けていきたいスポーツだね。

I:長いキャリアの中での思い出もお聞かせください。
鈴木:自分は「嘘をつかない、仕事は誠実に行う」をモットーにしてきた。それを見てくれていたのか、独立して会社を立ち上げた時、多くの人が金銭面で援助してくれた。自分の力以上に評価してくれる知人や友人に恵まれてきたと思っているし、間違いなく自分の財産と誇れる。人との関係で信頼や信用は非常に大事なもので、商売の基本でもあると思う。「自分だけよければいい」ではなく、相手と自分のバランスを考えて着地点を見つけることが、関係が長続きするコツのような気がしている。それらを通じて、自分で言うのも何だけれども「人を見る目」は随分養われたと思う。

I:そうした「いい関係」は、ずっと続いていらっしゃるのですね。
鈴木:今もお付き合いのある人たちとは、息の長い関係が続いているね。そうした人たちには、共通点がある。それは、相手と程よい距離感を保ってくれること。「近からず、遠からず」で互いを尊重し、いざという時にアドバイスをもらったり、助け合ったりする関係、と言えるかな。あと、自分が力を尽くしたけれども、物事がうまくいかなかった時に責めることはしない、というのも共通点かな。

I:では、これが最後になりますが、新社会人や若い方々にアドバイスをいただけますか?
鈴木:専門的な技術職と自分のように営業などに従事する人では、求められる資質の比重は異なっていると思う。モノづくりに従事する技術職の皆さんには、日本が高い評価を受けてきた伝統を是非継承してもらいたい。身につけた技術は仕事の幅を広げるし、長くその職に携われるという利点もある。

自分が歩んできた営業を振り返ると、最近テレビ番組のタイトルでも見かける〝大人のたしなみ”が対人関係を築く上で大切に思える。知識でも趣味でも自分のテリトリーから一歩踏み出して興味を広げることで、関係が深まったり相手から好感を持ってもらえたり。「性格は変えられない」と言うが、意識することで少し自分に変化をもたらすことはあるのではないか、と思っている。そして、全ての皆さんに繰り返すけれど「英語は必須です」

新社会人の皆さんは、戸惑いや不安を感じることがあるかもしれません。が、まずは置かれた環境で最善を尽くしてみましょう。言われたことをきちんとやり遂げる、それは自分の自信にもなるし、難しい仕事へのステップにもなります。もちろん、息抜きやストレス発散も忘れずに。自分と同じように、皆さんが良い出会いに恵まれた社会人生活を送られることを願ってやみません。
(了)

<編集後記>
語っていただいた社会人1年目から今に至るキャリアは、今まで伺っていなかったことも多く、興味深いものだった。鈴木顧問の席は私と近かったため、出社された時には仕事やゴルフの話にとどまらない幅広いお話を聞かせていただいてきた。そうした話題の豊富さは、若手社員時代からの不断の努力の賜物なのだと感じた。また「人間関係に恵まれた」と言われたが、それはご自身で信頼や信用を大切にしてこられた証ではないだろうか。4月以降、出社される回数が減るのが残念だが、「英語は必須」の言葉を忘れずに英語の勉強を(細々とでも)続けようと心に新たに誓ったインタビュアーだった。

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